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冬至線を守る(2) 何故、太陽高度等の計算方法を知る必要があるか?
 
地球は1日24時間で自転しながら、太陽の回りを1年かけて公転しています。ただ、地球からみると太陽が地球の周りを1年かけて順行しているようにみえます。その様を示したのが下図です。

天の北極と天の南極をつらぬく軸が地球の自転軸です。黄道とは、天球上にみる太陽の通り道のことです。天の赤道とは、地球の赤道を通る平面が天球と交差する点を結ぶ線分のことです。 点Bは、地球からみて最も太陽が高い位置にあがる時ですから、夏至の太陽位置を示しています。これに対して、点Dは最も低い位置に太陽があがる時ですから、冬至の太陽位置を示しています。天の赤道と黄道との交点は二つあり、点Aは冬至と夏至の中間点の春分点を、点Cは夏至と冬至の中間点の秋分点を示しています。
 さて、天の北極は北緯0度ですが、ここからは冬至の太陽はみえませんが、私ども北半球中緯度に住む者からは冬至の太陽は見ることが出来ます。私どもの郷土小松市は北緯36.4度くらいですが、小松市からみた天球の様子を示したのが下図です。

原点0は私ども観測者の立地点を示し、点N(真北)と原点を通る平面は観測者の立つ地平面を示しています。点Pと点Oを貫くのが自転軸であり、角PONが小松市の緯度である36.4度になっています。点Tとは観測者から真上に見える点であり天頂とよばれます。天の赤道は自転軸に直角になる平面です。北緯が高くなり、北緯90度になれば天の北極は天頂に等しくなり、地平面は天の赤道と一致してしまいますから、天の赤道の下側に太陽が順行する冬至の時には北緯90度では太陽は全く見れなくなってしまし、終日夜となります。
 私ども中緯度では、冬至の時の最も高くなる太陽高度は赤線でしめした位置にあり、秋分や春分の時には点Eの高さに、夏至の時にはそれよりも高い位置に太陽が姿を現します。ちなみに、点Fとは当社の創建日である明暦3年2月25日頃の太陽位置を示しています。旧暦の年月日をグレゴリオ暦に換算しますと明暦3年4月8日になりますが、春分以降ですから点Fあたりになります。創建日の旧暦2月25日は御祭神の菅原道真公のご命日であり、冬至からご命日までの期間は、菅公が太宰府にて最もご苦労された日々であり、無実の罪を天に訴える漢詩を詠んでおられます。11月25日のお火焚神事では菅公の漢詩を地元の漢詩・詩吟愛好家の方に吟詠していただくことになっています。
 天球上の太陽の位置は下図に示す赤道座標系にて表示します。


X軸は原点と天の赤道上の春分点を通る軸で表します。Y軸はX軸に直交する軸であり、Z軸は垂直軸を表します。天球を半径1の苑で表示し、天球上の太陽の位置を点Eで表すと、天球上のE点は赤経αと赤緯δで表示されます。赤経とは春分点よりはかった線分OEまでの角度のことです。E点を座標表示すると
   L=cos(α)cos(δ)
   M=sin(α)cos(δ)
   N=sin(δ)
となります。地球は一日かけて自転しますから、天の赤道を一周すると24時間、それゆえ、赤経の値は360度と24時間を対応させて時間単位で表示されます。赤緯とは、線分OEの(X,Y)平面への射影が天の赤道に交わる点から測った線分OEまでの角度のことであり、これも時間単位で表示されます。
 次ぎに私たちになじみの地平座標系を示すのが下図です。

地平座標系の原点は観測者の立地点を示し、x軸の正方向は原点から真南の方向にとり、y軸(の正方向)は原点より真東の方向に、z軸は地平面に垂直な軸となります。地平座標系でみた天体(太陽)の位置は二変数、方位角と太陽高度で表示されます。方位角(A)とは真南からはかった天体の位置までの角度を示し、太陽高度(h)とは文字通り地平面よりはかった太陽の高度のことです。
 天球上の太陽の位置は地球の公転運動によっても自転運動によっても変化していきますから、どの時点の太陽の位置を観測したいかを示すには時間を指定する必要があります。この変数が恒星時(Θ)とよばれるもので、経度0度の世界時0時(日本時間9時)のグリニッジ視恒星時(Θo)に観測点における観測時間を足し合わせた値に依拠して求められます。ただ、地球が自転により一回転する時間は24時間より若干短いため、24時間では約360.986度回転するとして計算します。
 具体例として、今、東経136.4486度の観測点での平成20年12月21日(冬至)午前7時23分の恒星時を求めると、理科年表よりΘo=89.9375度、観測点の経度=136.4486度となります。観測時間7時23分は標準時9時よりも1時間37分前ですから約1.6166時間前となり、標準時よりも(1.61666/24)360.986度だけ少なく進むことになります。これら3つの度数を足し合わせたもの(最後の数字はマイナスで足す)が、観測点における恒星時Θ=202.07度と計算出来ます。
 11月14日の本ブログで紹介した座標変換の式を応用すると、赤道座標系と地平座標系を対応づけることが出来ます。すなわち、赤道座標系(X,Y,Z)のZ軸を軸として正の向きからみて反時計回りに恒星時Θだけ回転させた座標軸(X',Y',Z)とし、これのY'軸を軸として、正の向きからみて反時計回りに(90度-緯度)だけ回転した座標系を考えると、これが地平座標系(x、y、z)に等しくなります(詳細は、長沢工著、天体の位置計算、参照)。この対応づけより、以下の基本式が求まります。基本式の左辺は、E点の地平座標軸(l,m,n)表示です。
  cos(h)cos(A) = - cos(φ)sin(δ) + sin(φ)cos(δ)cos(Θ-α)
  - cos(h)sin(A) = - cos(δ)sin(Θ-α)
    sin(h)           = sin(φ)sin(δ) + cos(φ)cos(δ)cos(Θ-α)
ここで、(α、δ)は観測日時における天体(太陽)の位置をしめす(赤経、赤緯)の値であり理科年表より求められます。(φ、λ)は観測点の(緯度、経度)、θは観測時間を示す恒星時です。これら5変数の値を使用すると、観測地点からみた観測時間における太陽の方位角と太陽高度を求めることが出来ます。ただし、大気層を通過する太陽光は地球の球面に沿ってやや上に凸に曲がって、大気がない場合に比較して、やや浮き上がった形で観測地点に到達します。この浮き上がりの角度が「大気差」とよばれるもので、実際には、地平線下にあっても大気差のために、日の出が観察者に見える時間は早まることになります。それゆえ、上の基本式で求めた太陽高度(h)に大気差を加える形で補正した値が正確なhの値となります。この補正式については前掲の長沢氏の著書などをご覧下さい。
 この公式を使用して、前回のブログで行った質問の一つ、冬至の日の出線を妨げないように防風雨雪対策(補植含む)をする位置を求めてみますと、本殿北東端の真北より時計方向にはかった122.15度線が堤防にあたる点より西側となります。また、このようになるのは冬至の日の午前7時23分30秒となることが計算出来ます。太陽光を直接目で観察することは目にもわるく困難ですが、こうした定量的な裏付けがあれば、入射光の正確な観察も可能となります。補植位置の同定を例にとれば、現場でこの角度地点に移動可能な遮蔽物をおいて、入射光をブロックすることにより、計算で求めた角度の検証も可能となります。また、この冬至線近傍にある創建時からの建物配置と冬至の日の出の時間推移を調査することにより、自然と人為の関わりに込められた願いの考察にも進めます。
 太陽高度や方位角の計算といったことは、国立天文台や国土地理院提供のインターネットサービスを利用すると精度よく(たとえば、大気差補正済の太陽高度の値を)計算してもらえますが、ここで紹介した身近な疑問を丁寧に解決していこうとするとどうしても解法について熟知しておく必要があります。このことを理解して頂ければ幸いです。長文のブログにおつきあいいただきお礼申し上げます。



author:bairinnet, category:科学に親しむ, 07:06
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