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河川改修の進捗と樹木調査
平成23年後半より着工しています本社関係の河川改修工事の進捗状況を示すのが、当社参道入口の「天満橋」付近に設置されています比較写真(画像1)です。

 
 
 
右側の図が完成予想図で、左側の図が本年101日時点の進捗状況です。図の上方が南で小松市街方向で、梯川は左方(東)から右方(西方)に流れています。梯川本川側の輪中堤はほぼ概成していて、目下、南西側の輪中堤工事と本社北側の分水路開削工事が実施されています。
 このようにかなり大規模な人為的な改変工事ですから、事業官庁では毎年2回、工事の事前評価委員会の植生担当委員を務められた樹木医殿らによる樹木調査を実施しています。後世への参考資料と大径木保全を担保しうるよりよき工事実施への参考等に供すべく、当社ではこれまでも本ブログにおいて途中経過を報告させていただいています。
 本年2回目の樹木調査が平成27114日午前に実施されました。

1.最初に、当社南側の輪中堤構築工事により、かなりの規模の枝打ちや根切りの実施された神門脇のタブノキの様子が調査されました。画像2は昨年
1031日現在のタブノキの模様であり、画像3は本年115日時点の画像です。
 
 
 
 
昨年は、平成25年の多雨と排水路未完成による境内地下水上昇影響のため、タブノキの根腐れ等で木が弱っていて、葉の数も少なく、葉の緑色が薄くなっていることが樹木調査で指摘されました。画像3は本年の状況です。調査では、葉の数はすくないままだが、葉の緑色には回復傾向がみられるとのことでした。比較として、河川改修の影響をうけていないタブノキの写真を画像4に示します。葉の数は圧倒的に多くなっていますが、葉の緑色は画像3の色と同様といえます。
          

 また、画像5の赤丸内が示すように、枝打ち跡の傷口からの盛り上がりも出てきていて、新葉も出てきています。
 
 
 
心配な症状は、次ぎの画像6の赤丸が示すように、枝打ち跡付近に白色腐朽菌が多数ついていることです。
 
 
 
こうした枝打ち跡がいくつか見られましたが、これは、樹木全体の活性を損なわないように、樹木自らが弱いところをさらけだしている証拠とみてとれるとの診断でした。それゆえ、こうした白色腐朽菌の繁殖している枝は打ち戻しをして取り去り、枝打ち跡に薬剤塗布をすることになりました。また、輪中堤工事箇所に隣接するタブノキの根元付近は30冂度の深さの穴を適宜あけて根に空気を供給するようにとの指導を受けました。

2.新たに新設された輪中堤と当社境内境界付近、特に、神門から西方の境界付近には昔からヒサカキが生育しています。画像7の赤丸内に一例を示していますが、この境界付近のヒサカキが枯死ないし枯れ始めています。

 
 
 
ヒサカキは陰樹であり、これらは河川改修前までは堤防際の日陰に生育していたものですが、改修工事により直接日射にあたることとなり、枯死したと判断されます。これらは除去して、適宜、陽樹に置き換えていく方向で対処せざるを得ないとの助言を受けました。

3. スダジイの状況


  分水路工事の準備工である地盤改良工事(矢板工)により大規模な枝打ちと根切りの実施されましたスダジイの状況調査です。生命力の弱まった生き物は、子孫を残すべく多くの花や実をつけます。枯死しました当社のドウダンツツジも直前の年には多くの花をつけたものでした。ところが、花や実を多く付けることはそれだけ生き物の活力を消耗することになります。このため、2年前から植生委員殿の助言を得て、当社では、花から実になるのを防止するために摘果剤を散布しています。シイの木への摘果剤散布の実例はなかったため、昨年は試験的散布でしたが、散布による葉枯れといった異常も観察されなかったため、本年は527日に300リットルの摘果剤を散布しました。画像8は高所作業車による高い枝付近への散布模様です。低い部位への散布は手撒きで実施しました。

  


 また植生委員殿の指示にもとづき、社務所では1015日から30日にかけて落下した実の収集を実施しました。
 
 上図は分水路方向の北側への散布画像ですが、南側には建物があり、散布が行き届かなかったためか、南側に多くの実がついていましたが、それ以外のところには実はあまり見られませんでした。画像9は、南側の多くの実のついている枝の画像です。
 
 
 スダジイが弱ってきたときの症状の変化は植生委員殿によれば、
 
  葉の緑色がうすくなる――>葉の大きさが小さくなる
―――>実の数が増え、実の大きさが小さくなる―――>実の中がからになる
 
となります。実の中がからになってくるともはや救いようがない状況です。
次ぎの画像10はこれに関する画像です。
 
 
 
まず、2枚の葉についてです。赤丸印の葉は当該のスダジイの葉です。その左側にある葉は、当該のスダジイに隣接して生育するスダジイ(枝打ち等の外的影響なし)の葉です。明らかに葉の大きさが小さくなっています。ドングリの比較ですが、赤丸印内は当該のスダジイの実ですが、幸いにも実の中がつまっており、最悪の事態はまぬがれているようです。隣接の正常なスダジイの実がとれればよかったのですが、隣接していたため摘果剤をうけて、実はとれませんでした。出来れば、当社以外の当地のスダジイの実で比較できればよかったのですが、青丸印内の実は、京都は八幡市の石清水八幡宮の参道で拾ったスダジイの実です。当社のスダジイの実は小ぶりです。
 本年の摘果剤散布時期は遅すぎたとの指摘を受けました。また、花が満開になる時期も高い枝や低い枝により異なりますので、業者には事前に摘果剤を用意しておいてもらって、来年は2回にわけて摘果剤散布を実施して、確実に摘果効果をあげるようにとの指示をうけました。経費のかかることで大変ですが、我が国でも初めての試みとのことですから出来るだけ実施できるようにしたいものです。

4. もみの木の活力低下

 

 輪中堤に隣接する境界付近に生い立つもみの木の変調が観察されました。画像11は当該もみの木の画像です。当社は小松城の鬼門鎮護の社として建立されましたが、そのため、当社の由緒に詳しい観光客の多くは小松城本丸櫓台にも立ち寄られていました。残念ながら、本丸櫓台は石段の劣化のため、現在は立入禁止になっています。この本丸櫓台から当社の森を眺めるときに指標となるのが、ひときわ高く聳える、このもみの木です。

 

 

葉の変色している枝が増えてきていることと種が多くついているとの指摘を受けました。確かに、もみの木の根元からだけでも画像12の示すように種子が集められます。



種が多いという事は花芽分化の時期である2年前の平成256月から7月上旬の気温と湿度の影響とのことです。当ブログの平成25425日号を御覧になるとわかりますように、平成254月時点では工事区域を区切る万能塀がもみの木南側に設置されていて、この後、地盤改良工事が開始されています。また、平成257月から9月上旬にかけて集中豪雨が多発した年でもありました。今年には、もみの木南側に輪中堤が構築され、それにともない、もみの木南側に40兌紊涼丙垢出来ましたので、この段差部分を植生で覆うべく画像13のような養生工が実施されました。

 

 

 

 

この養生工と共に根元に10冂度の盛り土がされましたが、画像14の赤丸印内の示すように、根元から新芽の出ていることが確認されました。このもみの木については今後の推移を要観察とされました。

  




5.  赤松の活力低下

 

 当該アカマツは工事の直接影響をうけていない境内に生育しており、画像15はその現在状況です。

 

 

 

葉の枯れ出している枝がみられることと、画像16の示すように幹から樹液が出ています。





赤松の表皮の下には形成層があり、そのまた内側に導管が通っています。樹液は形成層から出ていますので、何らかの理由で形成層が壊れてそこから樹液が出ていて、そのため、その下部にある導管が傷んで葉が枯れ出していることが考えられます。ちなみに、この松には平成26年2月に松食い虫予防の薬剤が注入されていて、松食い虫による葉枯れではないとされました。また、葉枯れの周囲の枝の先がまがっていることが観察されました。画像17の赤丸印内のように、枝の下垂れやねじれが見て取れます。この症状から、「モグリカイガラムシ」による食害による松枯れの可能性が指摘されました。その場合、予防としては薬剤散布しかないとのことで、植生委員殿からは今後とも要観察とされました。

    

                                            (以上)


 
author:bairinnet, category:鎮守の森と河川改修, 20:45
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