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新幹線工事と冬至の日の出の射入時間への影響:結論

冬至の日の出線上に神門と本殿が立地していることを記者発表したのは平成18年(2006)3月25日のことでしたが、この発表までの数年間は曇天がつづき冬至の日の出の画像をとることが出来ず、記者発表が出来なかったことを思い出します。それゆえ、明暦3年(1657)の創建にいたるまでには、やはり長年にわたる冬至の日の出の観測を経て社殿配置の検討が重ねられたものと推察されます。

  数年来、鉄道建設・運輸施設整備支援機構により、梯川を通過する橋梁はじめ線路桁架設・防音壁設置工事が進行し、小松市内の工事は完成に近づいています。防音壁工事の開始当初から、崇敬者より「この工事によって冬至の日の出の差し込みが悪影響をうけるのではないか?」との指摘をいただいていました。

これをうけ、令和2年8月に、社務所では「北陸新幹線 梯川橋梁他特定建設工事共同企業体」の担当者の方に調査方を依頼してきました。この申し出を行った年末頃の、当社近くの小松大橋から望む工事写真(図1)です。当社への冬至の日の出入射方向にある防音壁工事はまだ未完成の頃でした。

 

 その後まもなく、共同企業体の担当者の方より、完成後の構造物の高さ等をふまえて、防音壁設置後においても冬至の日の出線の神門への射入時間には影響を与えない旨の回答を得ることが出来ました。この回答内容は、令和2年(2020).12.20付の本ブログ「新幹線工事と冬至の日の出の射入時間への影響の有無」にて説明いたしましたが、結論部分(誤植を訂正)を再計算して説明してみます:

 共同企業体」の担当者の方の調査では、当社への冬至の日の出の射入位置方向にある新幹線の防音壁までの高さ(標高)=24.482m、これより当社本殿の標高2.64mを差し引いた21.842mとなります。この値を本殿から防音壁先端までの距離541.5364mで割ると、三角関数のtan の値がもとまります。逆三角関数(tan-1)を求めますと、本殿からみた防音壁先端の高さの角度として、2.31度がもとまります。河川改修後の現在の冬至の日の出の射入角度は、 2.75度から約3度 までですから、新幹線防音壁先端と本殿のなす角度2.31度は、これ以下となりますので、河川改修後の現在の射入時間には影響を与えないことが判明しました。

このことを現場で確認せんとしましたが令和2年、令和3年と冬至の日は曇天でした。今年の冬至は12月22日、明後日ですが、日の出頃の降水確率は80%の予報ですから今年も無理のようです。

もう一つの課題は、2020.12.20付のブログの追記に書きましたが、「騒音がひどい場合には防音壁の嵩上げ工事がされる場合がある」とのことでした。これについては、令和4年10月20日に開催されました鉄道・運輸機構 北陸新幹線建設局 環境対策課による関係町内会への説明会「北陸新幹線の環境対策説明会」における質疑応答より「新幹線高架橋の耐久設計に応じた防音壁高さを敷設しており、防音壁がこれ以上の高さに嵩上げされることは無い」旨の回答がありました。

以上より、新幹線高架橋防音壁による当社への冬至の日の出の射入には将来にわたって影響しないと結論されますことをここに報告いたします。

ちなみに、図2は平成28年(2016年)、平成の河川改修により当社の輪中堤が完成直後の冬至当日12月21日の朝日の射入画像ですが、この風景が今後とも持続することが明らかになりました。ご指摘・ご協力いただきました関係各位にお礼申し上げます。

 

 

追記:

 当社ブログの開始されました頃にかかれたブログ、平成23年(2011).11.19付「冬至線を守る(2) 何故、太陽高度等の計算方法を知る必要があるか?」について補足説明いたします。確かに、国立天文台のホームページにある「こよみの計算」に、観測地点の緯度経度と標高、観測年月日と時間を指定すると、当該地点・当該時刻における日の出の太陽高度や方位角(真北から日の出線までの角度)を即座に算出してくれます。ただ、この場合の太陽高度は小数点以下一桁まで(例えば、高度3.3度)、また、測定時間も何時何分(例えば6時10分)までで、6時10分30秒といった指定はできません。本文で引用しました2020.12.20付のブログに書きましたように、「河川改修後の冬至の日の出の射入角度は、(河川改修工事主体の金沢河川国道事務所の調査により)太陽高度で 2.75度から約3度」となっていますから、小数点以下二桁の値を算出しうるプログラムが必要となり、平成17年頃に社務所にて独自にプログラムを開発しました。それの使用法を例示してみます。

 例題として、令和2年(2020)12月24日(冬至3日後)午前7時26分、神門に射入する日の出をとってみます。この時の画像が図3です。

 

 

 

当社で使用しているエクセルプログラムは2011.11.19付ブログ「冬至線を守る(2)」に説明した計算方法に沿って作成したものですが、その全体画面が下記の図4です。

 

観測者が入力すべき箇所は赤字の箇所で、4行(ステップ)あります。

第一行(ステップ)には6か所あります。順番に

 指定時間=令和2年12月24日午前7時26分

  指定日の1日前の世界時の日付(T1)=12月23日

  日本時と同じ日付=12月24日(T2)

  指定時間(7時26分を時間単位で表示)=7.4333

    T1時の太陽の赤経=271.7558

(『2020理科年表』26頁より計算して求める)

  T2時の太陽の赤経=272.8654(同上)

第二行(ステップ2)にも6か所あります。最初の3か所は第一行に同じ。

  T1時の太陽の赤緯=-23.42722(『2020理科年表』26頁より)

  T2時の太陽の赤経=-23.4108(同上)

第三行(ステップ3)

 観測地点の経度=東経136.4486度

 観測地点の緯度=北緯 36.41617度

第四行(ステップ4)

 観測月日(T2)= 12月24日

 世界時0時におけるグリニッジ恒星時=92.979度

         (『2020理科年表』28頁より)

 観測時間(指定時)=午前7時26分

 世界時0時(日本時午前9時)からの指定時の経過時間を

  日単位で表示した値 =―0.065277

以上の値を挿入して求められた太陽高度が図4の最終行に青字でかかれています。

 エクセルプログラムで求めた令和2年12月24日(冬至3日後)

 午前7時26分に神門を通過する日の出の太陽高度

 = 3.2934度

ちなみに、国立天文台暦計算の値= 3.3度

となりますから、ほぼ同じですが、プログラムの方が小数点以下2桁ないし3桁まで値が求まります。

 ちなみに、この3.3度という値では、神門を通過する日の出の光は本殿には達しません。前述したようには太陽高度3度以下でないと本殿には達しないからです。また、観測時に秒単位まで出る時計を使用すれば、このプログラムを使用することでより正確な値が求まります。このように、自前のプログラムがあれば、現場写真からいろいろなこと(本殿に達するかどうかなど)が判明する一例をご紹介しました。

 

author:bairinnet, category:冬至, 09:42
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新幹線工事と冬至の日の出の射入時間への影響の有無

令和2年の冬至1日前の本日の北陸中日新聞紙上に「冬至の神門 貫く朝日:あす当日 天候は神頼み」と題する記事が掲載されました。読者の要望にもとづいて取材をつづけてきた記者による記事のようです。ただ、残念ながら今月は半ば以降曇天の日がつづき明日の日の出を観察することは無理のようです。ちなみに、図1は平成28年(2016年)の冬至当日12月21日の朝日の射入画像です。

 

 

当社社務所が冬至の日の出線上に神門と本殿が立地していることを記者発表したのは平成18年(2006)3月25日のことでしたが、この発表までの数年間は今年と同じく曇天がつづき冬至の日の出の画像をとることが出来ず、記者発表が出来なかったことを思い出します。それゆえ、明暦3年(1657)の創建にいたるまでには、やはり長年にわたる冬至の日の出の観測を経て社殿配置の検討が重ねられたものと推察されます。

  目下、鉄道建設・運輸施設整備支援機構により、梯川を通過する橋梁はじめ線路桁架設・防音壁設置工事が進行しています。

 以下の画像(図2)が目下、小松大橋から望む工事写真です。

 

 

かねて、当社崇敬者より「この工事によって冬至の日の出の差し込みが悪影響をうけるのではないか?」との指摘をいただいていました。これにもとづき、社務所では「北陸新幹線 梯川橋梁他特定建設工事共同企業体」の担当者の方に調査方を依頼してきました。その後、河川改修後の冬至の日の出線の神門への射入時間には影響を与えない旨の回答を得ることが出来ました。

 回答内容を説明するための予備知識として、2011.11.18付当社ブログ「冬至線を守る(1)」で紹介した以下の画像(図3)を紹介します。これは河川改修の事業主体の金沢河川国道事務所によって作成されたものです。

 

 

 

上図の点Aは地平線上に太陽があがってくる太陽高度を示しています。点Bは、冬至の日の太陽が白山山系の山々(具体的には、岐阜県白川村の妙法山周辺の峰峰)を越えて当社神門に差し込んでくる太陽高度を示しています。点Cは、昭和初期の梯川の河川改修工事によって築かれた堤防を越えて神門に射入するのに必要な太陽高度を、点Dは現在の河川改修工事により平均で四拾センチ高くなる堤防を越えて神門に射入するのに必要な太陽高度を、最後の点Eはこれ以上の太陽高度になると日の出の光が本殿にまでとどかなくなるような太陽高度(および時間)を示しています。
 当社創建時からの射入時間の変化をまとめてみます。創建時から昭和初期の堤防構築前まで、点Bから点Eまでの射入時間は4分30秒、昭和の堤防構築から平成の堤防増高工事までの間まで、点Cから点Eまでの射入時間は3分30秒、平成の堤防増高工事以後の射入時間(点Dから点E)は約1分間となります。このように、昭和の河川改修による堤防構築は冬至の日の出の神門への射入にあまり影響を与えませんでしたが、平成の堤防増高工事は大きく影響することが判明します。

 

 共同企業体」の担当者の方の調査では、当社への冬至の日の出の射入位置方向にある新幹線の防音壁までの高さ(標高)=24.461m、これより当社本殿の標高2.64mを差し引いた21.861mとなります。この値を本殿から防音壁先端までの距離541.9759mで割ると、三角関数のsin の値がもとまります。逆三角関数(sin-1)を求めますと、本殿からみた防音壁先端の高さの角度として、2.3度がもとまります。河川改修後の現在の冬至の日の出の射入角度は、図3の点D(2.75度)から点E(約3度)までですから、新幹線防音壁先端と本殿のなす角度2.3度は、これ以下となりますので、現在の射入時間には影響を与えないことが判明しました。ただ、このことを現地で冬至の日に確認するのは来年以降になります。

 

追記: 機構による新幹線工事完成後にJRによる運航が開始されてからの話です。騒音がひどい場合には防音壁のかさ上げ工事がされる場合があるとのことです。その場合には、冬至の日の出の射入がブロックされる可能性があります。そうした事態が想定される段階で、関係各位とも相談して、当社神門への射入時間(1分半程度)の日の出の通過範囲の防音壁部分に、透光性の透明な材質の防音材をはめ込んでいただくことを要望させていただきたく、各位のご理解ご支援をお願いいたします。

 

追記: 令和2年2020年12月24日、冬至より3日後の午前7時15分の神門に差し込む日の出方向の画像です。

 

 

新幹線の騒音防護壁の高さ部分(赤字)より上まで雲がかかっていますが、その上部は明るくなっていますから、神門に差し込む時間は遅れますが、差し込んでくる画像をとれそうです。次の画像は、724分の神門に差し込む日の出の画像です。

 

 

ただ、この場合、冬至当日に神門より本殿方向に入射する角度より太陽高度がやや高く、本殿方向よりやや南側に差し込んでいます。これも雲が少しかかっていたためです。冬至3日後の7時24分の観測地点における太陽の方位角や太陽高度を正確に求めるには、2011年11月19日づけの本ブログ「なぜ、太陽高度等の計算方法を知る必要があるか?」で説明した計算式をエクセルにおとして、理科年表2020版に記された観測日時(2020年12月24日午前7時24分)の太陽の位置を示す(赤経、赤緯)の値などを用いれば求めることができます。

author:bairinnet, category:冬至, 12:34
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再び冬至の日の出について
  当社の冬至の日の出は、神門から本殿方向に差し込んできますが、本殿近くからこの現象を
見ることは現在できません。もともと本殿脇には井戸を覆う小さな小屋があるのみでしたが、戦後、
その場所に神饌所などが建設されたためです。将来的には、本殿近くから観察できるように改築したいのですが、河川改修によって堤防の高さが40センチほど増加することにより、冬至の日の出の入射時間がどの程度短縮するか(かなり短縮することは概算で判明していますが)の検討にこの建物が役立っています。冬至の日の出の入射する角度等を肉眼で直接測定することは困難ですが、入射光が建物に反映する様をみて太陽の動きや入射角度を観察することはできます。こうした現場での観察と理科年表記載データ等を使用した太陽の位置計算公式により種々の検討が可能となりますが、この建物はこうしたことに有効な働きをしていますので、冬至候の日の出は本ブログ記載の画像のような位置からご覧下さい。
author:bairinnet, category:冬至, 12:02
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冬至の日の出と伊勢神宮の五十鈴橋
 今日の冬至の朝はあいにくの曇り空でしたが、それでもご夫婦の方と近くの整形病院に長崎県から入院されている方が冬至の日の出がみれないかと参詣にこられました。前にも書きましたが、冬至を境に太陽は北向しはじめます。実際は地球が太陽の周りを回っているのですが、地上からみると天球上を太陽が回っているように見え、冬至を過ぎると再び北半球の方に太陽が巡ってまいります。行った道を戻ってくるように見えますから、冬至の日の出はしばらくの間、ほぼ同じ方角から登ることになります。今日お見逃しの参詣者各位も初詣頃までの天気のよい早朝にご覧下さい。
 昭和19年立春から昭和20年節分までに生まれた方が古稀(数え年)を迎える平成25年には、20年に一度の伊勢神宮の遷宮(式年遷宮)式が執り行われます。式年遷宮においては内宮・外宮の各社殿、ご神具・ご神宝が全国からの拠金を得て新調されますが、本殿は場所が隣地に移動して建立されます。現在の本殿地は旧地として次回20年後の本殿地として保存されます。このようにご本殿は場所を変えて新造されますが、五十鈴橋だけは元通りのところに架け替えられますし、今回も架け替えられました。その理由は明らかではありませんが、同じ場所に架け替えられるおかげで五十鈴橋から登る冬至の日の出を仰ぐことができることを思うと、天の岩戸神事とのゆかりといい先人の思い入れや願いを強く感じる配置といえます。

author:bairinnet, category:冬至, 08:49
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冬至の日の出
 師走に入ると晴れ間と時間を見つけて境内の落ち葉掃きに努めねばなりませんが、
参詣者の女性の方から「冬至の日の出が見えるんですか?」と声をかけられました。
当社の神門・社殿配置が冬至の日の出線上にあることは知る人ぞ知る知見でしたが、
一般の参詣者の方から関心をもって問われたことは初めてでした。冬至は太陽が南限する時候
ですから、冬至を過ぎると太陽は再び北向しはじめます。それゆえ、日の出が神門に差し込む時間はやや異なりますが、冬至から初詣の頃までは差し込む日の出を観察できます。ただし、天候に
よりますが。
 ちなみに、下記は今年の冬至1日前の日の出の模様です。
神門から本殿方向に差し込む日の出の模様です。
伊勢神宮の五十鈴橋からの冬至の日の出は有名ですが、こちらは表日本と異なり晴れ間の少ない
時候に入っています。天気予報では今晩より雨模様とのことですから、今年はこの画像が冬至に
もっとも近い時候の日の出の画像となるかもしれません。



冬至1日前の日の出
author:bairinnet, category:冬至, 11:14
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