- 境内の地下水位計測に使用されている水位計の仕組み
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2021.08.12 Thursday
目次)
- はじめに
「世界で最も美しい10の実験」の一つであるフーコーの振り子については、本ブログ2014.1.24号の「科学に親しむ」項目中で扱いましたが、最も美しい実験の上位に来てもよいと思うのに、空気の重さ(大気圧)の値=101.3キロ・パスカル、を求めたイタリアの物理学者トリチェリ(1608年生ま)による「トリチェリの実験」があります(ここでは説明しませんが、インターネットで「中一物理(トリチェリの実験)」などを参照して下さい)。本稿では、キルヒホッフの法則の実用例として、水位計の仕組みを紹介します。
- 当社の地下水体の特徴と河川改修前後の樹勢調査結果
本ブログ2011.6.1号「当社地下水が宙水とよばれる由縁」で紹介しましたように、「当社の地下水は周辺の地下水体とは分離独立して局所的に存在する自由地下水体(「宙水」とよばれる)」と推定されるものです。また、2014.1.9日号「地下水位の上昇と植生影響(その2)」の説明するように、「境内の地層は、地下5mまでの浅層に盛り土を含め、粘土・シルトといった細かい粒質の土層が層状をなしているため、降雨が地下深くに浸透しにくい地層になっています」。そのため、境内に降った雨が地下水位を上昇させるリスクがあります。図1は、境内二カ所の井戸のうち、本殿近くの井戸の地下水位の経年変化を示したものです。河川改修工事は平成24年から平成29年まで実施され、この間、境内境界は矢板によって囲まれ、排水路も仮設排水路の状態でした。境内樹木にとっては地下1m以内に地下水位が上昇すると、根腐れを起こし、樹勢を弱める原因になります。
境内の地盤高は2.34mであることを念頭に図1をみてみますと、特に、平成25年の7月以降にかけて地下水位が上昇していることがわかります。この年は、7月と9月に大雨が降り、特に、7月の降雨では当社より上流の埴田観測所において、観測史上最高の水位を記録する洪水となりました。平成25年12月になると、神門脇のタブノキ等の樹勢が悪化してきましたので、タブノキ近くに深さ1m程度の仮設の穴を掘って地下水位を見た時の画像が図2です。深さ40センチぐらいまで地下水位があがっていました。
図3は、河川改修による植生影響をみるためのモニタリング松3本のうち、境内入り口(鳥居内側)の1本と境内中央に近い手水舎北側の1本について、金沢河川国道事務所により平成23年より毎年実施している樹勢調査結果のうち、工事直前の平成23年、工事中の平成26年、工事完成後の令和2年について図示したものです。樹勢調査は、11の観測項目について、良好から不良までを目視により4段階評価しています。河川改修直前の平成23年には、すべての項目で良好です。平成26年には多くの項目で樹勢が大きく悪化しています。これは前述の地下水位上昇が大径木の根茎に与えた悪影響によるものと思われます。改修工事完成後の令和2年になっても樹勢の回復は、葉の大きさ、枝葉の密度、枝の伸長良などにおいて半分程度の回復度合いとなっています。それゆえ、樹勢調査と共に、地下水位の観測は継続していくことになっています。
- 地下水位計測に使用される水位計の仕組み
さて、地下水位をはかるには、手作業では重りをつけた糸を垂らして、水にぬれた部分の糸をはかるなどして計測しますが、これでは連続測定は不可能です。それゆえ、当社境内井戸で使用されている水位計は、静止する水の圧力(静水圧)をはかることで水位を計測しています。
ところで、水深が判明しているときの静水圧の計算式は、静水圧を記号(Pa、パスカル)、水の密度を ρ、重力加速度をg、水深を H であらわすと
Pa = ρ x g x H
と書けます。ここで、ρ = 1.0 ton/㎥、g = 9.8 メートル/(毎秒の二乗)、H =5メートルとしてみますと、静水圧は49000ニュートン/平方メートル=49キロPa と求まります。ここで、ニュートン(N)とは、1キログラムの質量をもつ物体に、1メートル/(毎秒の二乗)の加速度を生じさせる力のことであり、質量1キログラムの物体に働く重力の大きさを表す力の単位のことです。
当社の変動する地下水位を連続計測するために使用されているのが水圧式水位計です。図4は、水位計の構成を簡単に図解したものです。
水位計開発のきっかけは、金属は変形すると電気抵抗が変化するという性質を見つけたことです。この性質を利用して開発されたのが、「ひずみゲージ」です。測定したい井戸内の静水圧(圧力)で金属片にひずみが生じ、それによって抵抗値が変化することによる電圧変化を計測することで、地下水の水深を計測しようというわけです。井戸の底に吊り下げられた水圧計の底部には、地下水の重さ(静水圧)だけでなく、大気圧(この大気圧は表水面の大気圧と同一値をとる)もかかってきますから、この大気圧を差し引いた静水圧だけを計測する仕組みになっています。
静水圧を感知する「ひずみゲージ」の電気抵抗変化を正確に計測するために使用される電気回路が「ブリッジ回路」です。イギリス人の科学者S.H.クリスティによって1833年に発明され、その後、1843年にイギリス人の物理学者C.ホイートストンによって広められたことから名付けられた「ホイートストンブリッジ回路」(下図参照、以下ブリッジ回路と略)です。この回路の仕組みを理解するのに使用されるのが、高校物理(電気回路)で学習する「キルヒホッフの法則」です(ちなみに、この法則は本ブログで紹介している「ホメオスタットの仕組み」の理解にも適用可能です)。
この図においてR1,R2,R3 は既知の抵抗、R4は「ひずみゲージ」からの電気抵抗を伝える可変抵抗、Viは既知の入力電圧、Ii,I1,I4 は各接点間を流れる電流値です。出力電圧Voの値から可変抵抗値R4の値を求めるのに使用されるのが二つの法則です。一つは、よく知られている電気工学の法則で、1826年にドイツの物理学者G.オームによって発表された「オームの法則」(電流と電圧の関係を示す)です。抵抗Rを通過して電流が流れている導体中の二点間の電位差を求める法則、V=RI(電流に比例し、比例定数を示すのがR)です。
もう一つが、プロイセン生まれの物理学者G.R.キルヒホッフ(1824-1887)の提唱した「キルヒホッフの法則」で、二つの法則「電流則」と「電圧則」からなります。前者は、「電気回路中の任意の接点において、電流の流れ込む方向をプラス、流れ出る方向をマイナスとすると、接点につながる複数の線の電流の総和=0」というものです。
これを適用するための補足ですが、出力電圧V0の測定器の抵抗は、ブリッジ回路で使用される4つの抵抗R1〜R4に比べて大きくとってあるため、電気回路中の接点間c−dに流れる電流は無視できるほど小さく、それゆえ、接点c−b間の電流=I1、接点d−b間の電流=I4 となります。
ここで、電流則を接点aに適用すると、
Ii – I1 – I4 = 0 (1)
同様に電流則を接点bに適用しても(1)式が得られます。
後者のキルヒホッフの法則の「電圧則」とは、「任意の閉回路に沿っての各部分回路の電圧の総和=0」というものです。入力電源Viと接点a-c-b からなる閉回路に電圧則を適用すると、
Vi = I1 R1 + I1R2 (2)
入力電源Viと接点a-d-b からなる閉回路に電圧則を適用すると、
Vi = I4 R4 + I4R3 (3)
(2)、(3)より二つの電流値が次のように求まります。
I4 = Vi / (R3 + R4) (5)
出力電圧 Vo は、接点cと接点dとの間の電位差ですから、
Vo = V(a-d) – V(a-c)
= Vi (R2R4-R1R3)/[(R1+R2)(R3+R4)] (6)
となります。ここで計算の簡単化のためだけに、ひずみ測定に使用されるブリッジ回路では、初期時点には、4つの抵抗値の値が同一値になるように設定されているとします。すると、(6)式より、初期時点の出力電流=0となります。これがひずみの無い時(井戸の表水面ではかった場合)の出力電流値です。
地下水中に計測器を投下させ、それにより「ひずみゲージ」と呼ばれる金属の抵抗線が伸ばされることにより可変抵抗値の値が微少に変化して
R4 ――――> R4 + ΔR
になったとします。すると (6)式は
Vo = [ΔR/(4 R + 2 ΔR )] Vi (7)
と書き換えられます。ここで、「ひずみゲージ」の抵抗変化が極めて小さい(微少な変化を感度良く測定出来るように「ひずみゲージ」を設計する)とすると、(7)式分母の2 ΔRは無視できますので
(7)式は
V0 = ΔR Vi /( 4 R ) (8)
となります。(8)式を用いると、出力電圧の値 V0 より「ひずみゲージ」の抵抗変化(ΔR)が求まり、これより水深を(連続的に)計測することが可能になります。
(7)式の示すように、抵抗変化が微小であることが要点であります。それゆえ、微少な抵抗変化を感度良く測定出来るように「ひずみゲージ」を設計(使用する素材を含めて)することが大切になります。この水圧式水位計の電源が乾電池であることを考慮すると、効率のよい「ひずみゲージ」の開発が重要になります。
備考:本ブログ作成にあたり、ヒヤリング調査に協力いただいた金沢河川国道事務所および当社の測量業者各位にお礼申し上げます。
- 小松基地の騒音評価式 W値からLdenへ(下)
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2015.05.26 Tuesday
新しい騒音評価式をどのように計算するかですが、その為に、以下の図4をみて下さい。
図4の右の方には実際の騒音レベル(デシベルで測定)を測定したものですが、ピーク騒音値が 暗騒音+10db 以上の騒音が新たな騒音評価式の対象となります。暗騒音とは、対象とする航空機騒音(小松飛行場の場合は、自衛隊機による航空機騒音)がないときのバックグラウンド騒音値のことです。暗騒音より10db以上の騒音については、暗騒音の影響がないとされているためです。ピーク騒音値が暗騒音+10db以上であって、暗騒音+10dbの騒音値を超える騒音(これを評価対象騒音と略称)の持続時間が t1からt2時点の間であったことを図4の右側のグラフは示しています。このデータより、t1からt2の時間内に発生する評価対象騒音のエネルギー量を足し合わせて、このエネルギー量が1秒間で発生したとしたときの騒音レベルを計算したものが、図4の左のグラフで示した 「単発騒音暴露レベル」(LAE、デジベル単位)とよばれるものです。
この LAE を1日の全ての飛行回数について計算して、各LAEを音のエネルギー量に換算して足し合わせてから、1日の総時間(秒単位)=24x60x60=86400秒 で割返して求めたものが その日の Lden 値になります。
今、例示として 自衛隊機の飛行回数の少ないとある日曜日に4機飛来(着陸時)したとして、飛来した時間とその測定値が以下のようであったとしてみます。
時間 ピーク騒音 暗騒音 LAE 継続時間(デシベル) (t1-t2、秒)
14時 73 44 84.9 44
19時10分 79 58 88、4 24
19時20分 73 57 82,8 20
19時30分 72 54 84、6 32
いずれも 暗騒音+10db 以上のピーク騒音(db)になっていますから、Lden の対象騒音です。騒音の発生した時間帯ごとにLAE を音の騒音エネルギーに変換します。
ステップ1) 時間帯が午前7時から19時までの間に発生したLAE騒音値を
10**(LAE/10)
として騒音エネルギーに変換して足し合わせます。ここで {**}はべき乗の記号です。上例ではこの時間帯の騒音はありません。
ステップ2) 時間帯が19時から22時までの間に発生したLAE騒音値を
10**((LAE+5)/10)
として騒音エネルギーに変換して足し合わせます。上例では各々
9.772x10**8
2.1877x10**9
6.0255x10**8
9.120x10**8
となり、合計値は 4.6795x10**9 となります。
ステップ3) 時間帯が22時から翌朝7時までの間に発生したLAE騒音値を
10**((LAE+10)/10)
として騒音エネルギーに変換して足し合わせます。上例では
この時間帯の騒音はありません。
ステップ4)ステップ1から3までの合計を1日の時間(86400秒)にて割返します。
上例では、54161,681 と計算されます。
ステップ5) この観測日の
Lden =10xLog(ステップ4の値)
= 47.3 (db)ちなみに この日の
W値 = 58,2
と計算され、非常に低い値です。
平成19年12月の環境基準では
もっぱら住居の用に供される地域の基準値Lden 57db以下
通常の生活を保全する必要がある地域の基準値Lden 62db以下
となっています。
この例からもわかりますように、新たな騒音評価式では、現行のように異質な二つの項(音の平均エネルギー量を感覚量に変換した項、と 発着回数の加重和)を足し合わせて評価するものよりは、より理解しやすいものになっていますし、この算式では、前述のような逆転現象は回避できます。
ちなみに小松飛行場の騒音コンターとLdenの値との対応は以下のようになっています。
W値 Lden
75W以上 は 62db以上
80W以上 は 66db以上
85W以上 は 70db以上
90W以上 は 73db以上
ところで W値に比べてLdenの利点は逆転現象解消以外になんでしょうか。小松飛行場からの離陸する自衛隊機を観測していればよくわかりますが、通常は 数機(3機)が連続して離陸してきますから、騒音レベルが次第に強くなりピークに達してから落ちていき、しばらくすると次の騒音がくるよういうように,連続的に騒音エネルギーに暴露されますが、こうした状態の評価には、Lden値の方がより騒音感覚量に対応していますから、騒音の程度のひどい地域の騒音をより正確に評価しうる評価式といえます。
小松飛行場の立地する小松市では毎年「基地と小松」という図書を発行し、市立図書館でも閲覧可能ですが、この中に、昭和60年から最近年までのおよそ30年間にわたる各地の騒音水準(W値)を公表しています。これをみると、この30年間でほとんどの測定点の騒音値は減少していますが、20数カ所の測定点の中で、私共の町内に最も近い測定点の騒音値は減少していません。
少子化および地方創成の観点からも子育てのしやすい、雇用基盤の充実した街作りの重要性がさけばれていますが、是非とも、飛行場周辺の地域の騒音の低下にむけて、離陸方法の改善や離陸時の操縦技術の向上や機材の改良に鋭意取り組んでいくことが必要です。
- 小松基地の騒音評価式 W値からLdenへ(中)
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2015.05.26 Tuesday
飛行機は非常に便利なものであり地域間交流には不可欠な交通手段ですが、他方、飛行経路下および周辺には騒音をもたらします。前述のブログで紹介しましたが、これまでの騒音評価式は WECPNL(W値)という指標を使用するものでした。この式は、個々のピーク騒音値を音のエネルギーに換算したものの総和を、音の発生回数で割り返して得られる「音の平均エネルギー量」を感覚量に変換した項と「騒音発生回数の加重和」を足したものです。
WECPNL=dB(A)+10・log(N) ー27
ここで
N = N2+3・N3+10・(N1 + N4)
ところがこの方式では、従来よりも飛行機の発着回数が増えるとW値の値が減少するということが航空機騒音を調査していたNPOの方々から指摘されるようになりました。例示してみます:
ケース1) 日中75機、夕方18機、深夜・早朝7機の100機が発着し、
音の平均エネルギー量を感覚量に変換した項の値が 80dB であったとしてみます。
この時の WECPNL = 76 と計算されます。
ケース2)ケース1よりも飛行機の発着回数が増加して、新たに 日中91機、夕方9機の100機増えたとしてみます。100機増加したけれども、音の平均エネルギー量を感覚量に変換した項の値は 70dB に減少したとしてみます。
この時の WECPNL = 75.41 と減少してしまいます。
WECPNLは、ピーク騒音レベルと時間帯別発着回数の関数ですから、新規参入の飛行機が日中に多く飛行したり、ピーク騒音値が既存のよりも低くなっている場合などでは、こうしたことが起こりうるのです。
新たに100機分 飛行回数が増加したのにもかかわらず騒音評価値が減少してしまうことがおこるのです。これでは、現行の航空機騒音基準内であるとして、さらに飛行回数を増やしたりすることも可能となるだけでなく、国民の常識的感覚とも合致しません。
それゆえ、こうした不合理をなくすために、国の中央環境審議会では、各国で採用されている騒音評価式の調査や各種騒音評価式の比較検討を行って、新たな航空機騒音評価式として Lden(時間帯等価騒音レベル)を採用しました。これまでのWECPNLは騒音値と加重発着回数の足し算という変則的なものでしたが、新たな算式は騒音値をより反映したものになっています。次回は、このLdenがどういう指標であり、これまでのW値に比較しての騒音評価式としての優位さを見てみることにします。
- 小松基地の騒音評価式 W値からLdenへ(上)
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2015.05.26 Tuesday
私どもの古里小松には我が国の防空を担当する小松基地と共に民間飛行場の小松空港があります。
図1は、小松飛行場周辺騒音区域として指定されている地域の概略図ですが、主として昭和59年までに指定されている地域の概略図です。小松飛行場に隣接する区域は第二種及び第三種区域であり、その周囲の斜線で囲った区域が第一種区域です。この区域割(騒音コンターの作成)に使用されるのがWECPNL(うるささ指数とよばれ、W値と略称)という騒音評価式です。第3種区域とはW値95以上、第2種区域とはW値90以上、第1種区域の中はさらに3分割されて、W値75以上区域とW値80以上区域、W値85以上区域に分かれています。ちなみに当社の立地する天神町は図中の緑丸で表示される地点ですが、第一種区域のw値80以上と85以上の二つの区域に町内が分断されています。
飛行機の場合は揚力のために風向きに向かって上昇しますから、小松飛行場の東北方向に位置する当社周辺には、北風から東風の時に飛行機が飛来します。図2は、航空ショーの練習にて飛来した8機編隊飛行が小松基地を飛び立って町内上空を通過していく様子です。
このような8機編隊飛行は航空ショウの前に練習としてありますが、通常は、1機づつ3機程度連続して離陸するか、2機編隊にて離陸していきます。とある日、ほとんど風のない日の午後1時台に14機離陸していきましたが、その内の6機は4分間に2機づつ3回編隊飛行で離陸していきました。図3は2機編隊で離陸して当社上空を上昇中の画像です。
さて、現在の騒音コンター指定に使用されている騒音の評価式である「WECPNL」(加重等価連続知覚騒音レベル)(W値)の理解には、精神物理学(知覚心理学)や統計学の知識を使用して説明されますので、ここで紹介してみます。
音のうるささは人間の五感のうち聴覚にかかわりますが、19世紀のドイツの生理学者であるE. Weber と彼の弟子であった物理学者のG.Fechner は、五感による人間の知覚に関して「人間の感覚量は物理的な刺激強度の対数に比例する」という法則を発見しました。音の場合、音の物理的な大きさはパスカル (Pa)で表示されますが、一パスカルとは、一平方メートルにつき一ニュートン(N)の力が作用する圧力のことをいいます。人間の知覚する音の感覚の強さを示すにはデシベル(dB)単位を使用します。ただし、人間の耳の聴くことの出来る最小音は20マイクロ・パスカル(V)といわれていますから、これとの相対値の二乗の対数値として、以下の式にてpパスカルの音刺激に対する感覚騒音レベル L(感覚量としての音の大きさ)を定義します:
L=10・log(p・p/V・V) dB = 20 log(p/V) dB
ここで、対数は10を底とした常用対数を使用します。このdB値は騒音計にて計測しますが、WECPNLで使用するのは、ピーク騒音値です。上図のような航空機の場合は、徐々に騒音値が高まってきて観測点の上空にきたときにピークになり、それから徐徐に減衰していきますから、ピーク値は比較的求めやすいものです。
さて、1日のうちでは、ピーク騒音値の値もばらつきますし、多くの騒音値が得られます。また、同じ騒音値でも寝静まっている深夜や早朝の場合はよりうるさく感じるものです。これらを考慮して、これまでの我が国の騒音の環境基準では以下の式にて WECPNL を定義しています:
WECPNL = dB(A) + 10・log(N) ー 27
ここで
N= N2 + 3・N3 + 10・(N1 + N4)
、N1とは午前0時から6時59分までの騒音発生回数、N2は午前7時から午後6時59分までの発生回数、N3は午後7時から午後9時59分までの発生回数、N4は午後10時から午後11時59分までの発生回数となりますから、深夜と早朝の騒音発生回数は大きく評価されるようになっています。また、dB(A) とは、個別のピーク騒音値を対数変換される前の騒音エネルギー量に戻してから足しあわして平均化した「音のエネルギーの平均値」をだし、それを対数変換して感覚量に直したものです。式で表示すると
dB(A) = 10・log ( (∑( 10**(第i番目のピーク騒音値) ) /n )
となりますが、n は騒音発生回数のことです。
今例として、毎日のWECPNL値を計算して29日分として29個のデータが得られたとします。この時に、この29個のデータを小さいもの大きい順番に並べ替えてみたときに以下のようになったとします:
48.6 59.7 68.2 69.4 69.5 71.7 72.3 72.9 72.9 73.6 75.5 77 77.2 77.4 78 79.6 80.4 80.8 81.2 82 82.4 82.7 83.2 83.4 83.6 84.1 84.4 85.3 85.7
順位1番から29番目までを100%までに均等に並べたときの90%のところのWECPNL値のことを、この値の観測された地点のW値といい、この場合は、84.1 と求められます。もちろん、法的な意味でのW値は長期間にわたる観測値から求められますので、もっと沢山のデータが必要になりますが、原理的にはこのような算定式になっています。
以上の算定式のうち、Weber-Fechner法則については脳科学との関わりが知られているようです。すなわち、音波が鼓膜に達してから知覚されるまでには、途中の神経回路において神経細胞の発火によって伝達されねばなりませんが、到達する音波を対数変換なしに伝えていたのでは膨大な数の神経細胞が必要になり、情報伝達のコストを節約するためにも対数変換して伝達しているのではないかといわれています。生体系にもコスト計算の視点があることは興味深いことです。
- 学際科学に親しむ(2):生き物と人間の社会的意思決定
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2014.10.10 Friday
数年前に小松天満宮の梅園の梅の木に、ミツバチの分蜂群が出現しました。
ミツバチの巣に新しい女王ばちが誕生すると、それまでいた女王蜂は巣を新しい女王ばちに譲って、数千匹ともいわれる手下の働き蜂と共に新しい巣に引っ越します。その際、新しい巣の適地をさがすための一時の仮の宿となっているのが、この画像の白線内の状況なのです。数日間このような状態で、働き蜂は適地を求めて飛び回り、よいと思われる適地を見つけると、この仮の宿に戻ってきて、ダンス(周回運動)により他の蜂に自分の見つけた巣候補地のアピールをするのです。自分の選好の程度は、周回運動の回数と強さによって表現され、よいと思えば、回数が長くなり、また、強い周回運動をしてアピールします。こうして働き蜂が見つけ出した候補地の中から、分蜂群の集団的意思決定により、一番よい候補地がみつけられて、一斉に飛び立っていき、画像のような状況は数日後には跡形も無くなっているのです。
ミツバチの種群の生存は、一匹の女王ばちと雄蜂の生殖行動によって確保され、それを支援するのが数的には最も多い働き蜂です。この女王蜂が死んでしまえば、種群の生存は不可能になりますから、新しい巣を見つけて生殖行動を実施することがミツバチ種群にとっての最重要の課題となります。時間をかけて意思決定をしていたのでは、種群全体が飢え死にしてしまいますから、効率的に意思決定をして新しい巣を見つけねばなりません。こうしたミツバチの意思決定の仕組みは、トーマス・シーリー著、「ミツバチの会議」などによっても紹介されています。
(2)人間社会の意思決定モデルとの比較
それでは、このミツバチの意思決定の仕組みは、人間社会の社会的意思決定に有用な知見を提供してくれるのでしょうか?
ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ケネス・アローは、民主社会における社会的意思決定ルールの満たすべき必要条件として四つの条件を挙げています。第一(広範性の条件)は、社会を構成する人々の表明する選好順序がどのようなものであっても、それにもとづいて社会的意思決定を行いうる、という条件です。第二(パレート原理)は、任意の二つの社会状態x、yに対して、全ての人がxの方がyよりもよいと選択したなら、社会的選択も同様の選択をするというもので、これも常識的な条件です。
第三は「関係しない代替案からの独立性」条件であります。今、代替的社会状態の集まりが二つ(x、y)あり、x、yに関する全ての人の選好が同一(xをyより選好)であったとしてみます。この時、第三の代替的状態zを導入して、選択しうる社会状態の集まりを三つに拡張しても、xとyに関する社会的選好結果(xをyより選好)はzによって影響を受けてはならない、というものです。
第四は非独裁制条件であり、社会的選択においては独裁者の存在を許してはならないという条件です。これも民主的意思決定には必要不可欠の条件であります。アローの結論は、この一見妥当な四条件を満足する社会的選択ルールは存在しないというものです。
この社会的選択論とニホンミツバチが見せる、新しい巣への移動に伴う見事な集団行動とのかかわりはどうでしょうか。ミツバチは巣から一定距離以内ではあるが、その範囲内で、巣になりうるどんな場所についても、好ましいと思えば仮巣に戻ってきて報告し、その報告が何であっても、最終的に分蜂先の集団的意思決定に成功していますから、広範性(第一)条件を満たしています。また、分蜂の刻々変化する形状を経て、最終的に皆の意見が一致した時に新たな巣に飛び立っていくので、第二と第四の条件も満たしているとみなされます。
問題は第三条件です。この条件も満足させなければならないとしたら、分蜂群の集団的意思決定は観察されません。働きハチが蜂球内を動き回って(一種の足による投票)合意形成を図り、集団的意志決定に成功しているとしたら、第三条件は満たされないはずです。
実際、ヘブライ大学昆虫学部のSharoni Shafir らは、西洋ミツバチを用いた異なる蜜源間の選好実験により、この第三条件が満たされないことを報告しています。
(3)ミツバチの集団的意思決定から学ぶこと
ミツバチの分蜂先を決めるのは、ある特定の分蜂先への支持が多数になったときに一斉に飛び立っていく、多数決によって決めているのでしょうか? 多数決で集団(社会)の意思決定を行うのは、先ほどのアローの4条件を満たしません。それをみるために、今、社会が3人からなり、代替案が3つ(x,y,z)ある場合を考えて見ます。個人1の3代替案の選好順が xがyよりよく、yがzよりよい、とします。個人2の選好順が yがzよりよく、zがxよりよい、とします。個人3のは、zがxよりよく、xがyよりよい、とします。この時、(x、y)との投票では、個人1と個人3が賛成で多数ですから、社会的には xがyよりよいとなります。(y、z)では、yの方がzよりよいとなり、(x、z)では zがx よりよいとなります。結果として、この3代替案の中で社会的に最もよいとされる案を決めることが出来なくなり、多数決ルールは、アローの第一条件を満たさなくなります。
人間社会の多数決では、多数決で決め得た場合でも、負けた敗者の無念はいつまでも残ることがあります。これに対して、ミツバチの場合は、各所から帰ってきた働き蜂による周回運動が繰り返される過程で、劣勢の候補地を推す働き蜂の周回運動は弱くなり、最終的に「勝者総取り」の形で分蜂先が決定します。それゆえ、敗者の無念は存在しない形で集団の意思決定がなされているとみなせます。敗者の無念が残るのは、意思決定参加者の代替案に対する選好が社会的意思決定の過程で変化しないことにあります。
これらを踏まえて、前褐の「みつばちの会議」はミツバチの分蜂群意思決定から学ぶ智恵として、「多様な解答をさぐる」や「集団の知識を議論を通じてまとめる」などを揚げていますが、これは意思決定参加者の代替案に対する選好が議論を通じて変化していくこと、また、変化していくような実りある議論過程の重要性を示しています。
- 学際科学に親しむ(1):ホメオスタットの仕組み
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2014.10.05 Sunday
人間の脳をモデル化し、その電気機械を作製したのが 英国の神経科医でありサイバネティックス研究者のW. Ross.Ashby(1903-1972)です。人間が他の生き物よりも優れているのは、外界の変化への適応力が高いことです。適応力が高いということは、外界の状況が変化したときに、自己の生存に必須の諸変数を生存限界内に安定的に保持しうるようにできるということです。このために、脳が活躍するものですから、アシュビーは脳の働きを模写する模型を作成したのですが、その成果は「Design for a Brain」(初版は1952年)という著書にまとめられています。ここでは1960年出版の第二版の8章等により、その仕組みを説明してみます。このモデルは脳を模写する理論としては単純なものですが、より複雑なモデルを考察するための出発点となるものです。
図1は Ashby(1960) (出版以来50年経過しているので、図1,図2、図3は無断引用させてもらっています)の101頁に記載のホメオスタットの実物写真です。ホメオスタットは4つのモジュールから構成されており、各モジュールの上部には回転する磁石がついています。磁石の前には水槽があり、水槽の両端にはプラス極とマイナス極が取り付けられています。回転する磁石には鉄線がとりついて、水槽の中にたらされていて、この鉄線(のプレート)が磁石の位置に応じて電位をとらえます。
以下の図2は102頁掲載図ですが、ホメオスタットは4つのモジュールからなりますが、一つのモジュール(モジュールD)の回路図を示しています。各モジュールには他の3つのモジュールからの出力電流が入力として結合されています。図で青色でかこった(X,P)のXは入力電流の極性(プラス、マイナス)を決めるパラメーターであり、Pはコイルに流れる電流の大きさを決めるパラメーターです。図1の各モジュールの前面の上段についている4つのボタンがパラメターPを決めるボタンであり、その下の上下に倒すスイッチがパラメターXを決めるもの、三段目の黒ボタンがスイッチSに対応しています。これらは手動で設定されます。
モジュールDの入力は、自分自身(モジュールD)の出力と他の3つのモジュールからの出力ですが、おのおのに(X,P)でもって調整された電流が当該のモジュールの4つのコイルに流れます。図1の各モジュールの上部には、透明な箱の中に平らな楕円形の4つのコイルの集まりがあり、このコイル群の作り出す磁界を感知する棒磁石と磁針(M)が設置されている。当該モジュールの系が安定状態にあれば、磁針は水槽の中央にとどまり、安定状態になければ、磁針は中央から両端のいずれかの方向にむかって変位していきます。この変位が所定の変位(閾値)よりも大になると、このモジュールは異常な事態になっていると判断します。例えば、人体では体温は通常はほぼ一定値をとっていますが、発熱などすると体温が上昇してきます。この上昇が一定値を超えた場合などがこれに対応します。人体の生存に必須の変数は体温だけではありませんから、人体の恒常性を模写するには4つのモジュールでは足りませんが、アシュビーのホメオスタットは、本質的(必須)変数が4つの場合です。
変位の程度を判断するのに使用されるのが図中の3極真空管です。3極真空管は陰極(カソード)と陽極(プレート)とグリッドからなります。陰極が暖められると、自由電子が陽極にむかって集まりだし、電流が流れます。ところが、グリッドに負の電圧がかかると陽極に向かう自由電子の動きが阻害され出します。磁針の針をグリッドにつないでおいて、変位が大きくなると、大きさの程度に比例してグリッドにマイナス電圧がかかるようにしておきます。磁針が水槽の中央にあるときの3極真空管を流れる電流を基準電流としますと、3極真空管からの出力電流(当該モジュールの出力電流)が基準電流の一定範囲内にあれば、当該モジュールの出力電流は0となります。変位が大きくなると陰極から陽極に到達する電子は減少し、3極真空管からの出力電流は減少していきます。基準電流に比較して3極真空管からの電流の減少が大きくなると回路図のリレー回路Fが働いて、当該モジュール系が不安定になっている(人体でいえば恒常性が破綻している)と判断して、当該モジュールから、大きな出力電流を出します。この大きな電流は、モジュールDだけでなく、他のモジュールにも流れていきますが、この大きな出力電流が流れると、モジュールDのリレー回路Fが閉じて、記号Gで表示されるユニセレクターでコイルDに流れる電流に影響する抵抗値をランダムに変化させます。
図2の回路図において、モジュールAのスイッチは、事前に手動で(X,P)の値を設定する回路につながれています。モジュールCからの出力電流についても同様です。対して、モジュールBのスイッチはユニセレクター(U)に接続しています。Uは25個の抵抗値をとることが出来、モジュールの出力電流が許容範囲より大きい時には、抵抗値をランダムに変化させてコイルBに流れる電流に影響を与えます。
一つのモジュールには4つのコイルごとに二つのパラメターがありますから、4つのモジュールでは32個のパラメター値、これらは手動で設定します。対して、ユニセレクターでは25個の抵抗値をランダムに変化させることが出来ます。各モジュールの出力電流をユニセレクターを通すように設定しておけば、各モジュールは25の4乗通りの抵抗値を通じて4つのコイル電流の大きさ(それゆえ、磁針の位置)に影響を与えることが出来ます。最終的に、4つのモジュールの水槽内の磁針が許容範囲内(水槽の中央からの一定範囲)にとどまり続ける時に、この4モジュールから成るホメオスタットは超安定性を達成したとされます。
図3は Ashby(1960) 211頁記載の図ですが、モジュール数が3つの場合のホメオスタットの出力電流を示しています。
横軸は時間で、Uと書かれているのがパラメター値を変化させた時点を示しています。第一モジュールの出力は開始早々上昇して閾値にかかりますので、時点Jにてパラメター値が変化し、その結果、第一モジュールの出力は上限閾値を脱しますが、下限閾値に達しています。また、モジュール3の出力も下限閾値に達していますので、時点Kにてパラメター値が変化し、その結果、モジュール3の出力は下限閾値を脱しましたが、モジュール1の出力は上限閾値にかかっています。時点Lにてパラメター値が変化しますが、モジュール1の出力電流は上限閾値に留まったままです。そこで、時点Mにて再びパラメター値が変化し、その結果、モジュール1の出力電流も基準電流に戻っています。超安定性を確かめるために、人為的に、モジュール1の出力を変化させてみましたが(図3の記号D)、3つのモジュールとも安定的に基準電流値に戻ってきて、安定均衡が達成されたことが確認されている例です。
Ashbyは、また、ホメオスタット電気模型が2階の微分方程式体系で表示できると共に、鉄線フィラメントのたらされる水槽内に十分な粘性があり、磁石が円滑に回転出来る(慣性モーメントがきわめて小さい)ならば、1階の微分方程式系で表示出来ることを示しています。すなわち、ホメオスタットの仕組みは微分方程式で以下のように定式化されます。
dXj/dt = bj1 X1 + bj2X2+bj2X2+bj3X3+bj4X4 j=1,2,3,4 (1)
ここで 右辺の各係数は、各モジュールで設定される係数値であります。 変数は本質変数のことであり、ホメオスタットの場合は、4つのモジュールごとに設置されている磁石の磁針の中心からの乖離の程度に対応しています。4変数からなる微分方程式の各係数値と初期値を与えての解法を図示したものが下図です。
所与の初期値からスタートしてみます。ホメオスタットの場合は、各モジュールの磁針の初期位置における中心からの乖離の程度が初期値に対応します。上図では、図示の都合上、変数が二つの場合を示していますが、所与の係数値の組み合わせが上図の(計数値0)のもとで、微分方程式を解いていきますと、点Aで制約面(磁針のふれる限界)にあたってしまったとします。すると、ユニセレクターが働いて新たな係数値を見つけ、それが(係数値1)であったとします。上図は、この係数値のもとで微分方程式系が安定均衡に到達したことを示しています。アシュビーのホメオスタットは、各モジュールの磁針が制約内に戻ることになっていますから、E点は制約内にあります。
式(1)の微分方程式系が安定均衡解に到達するのは、係数行列の固有値の実部が負の場合ですから、そのような固有値が得られるように設計された電気機械がホメオスタットであったといえます。
実際には、モジュール数はホメオスタットの4つよりも多く、それゆえ、生存に必須の本質変数の多くなります。また、本質変数の相互作用が線形微分方程式で近似しうるとは限りません。その意味では、脳の仕組みを模写するモデルとしては、初歩的なモデルではあります。
アシュビーは、ホメオスタット完成後に、モジュール数を増やすことを試みています。変数の数が多くなりますと、たとえ安定性を達成しうるとしても時間がかかります。御嶽山の噴火や旅客船の沈没事故などの場合の示すように、生存はまた時間との闘いでもあります。こうした場合、システム変数が相互に連結されていたのでは、情報が多すぎて、安定均衡(恒常性)を達成しうるとしても無限大近くの時間がかかってしまいます。
これに対して、脳には多くの部分系があり、日常生活に生起する外乱の例として、目による物の認知をとっても短時間で適応(認知)しています。それゆえ、適応経験の蓄積を利用していくためには、脳の仕組みモデルとしてのホメオスタットは完全連結系では駄目であること。システムを部分系にわけて、部分系間を連結した方が部分系を孤立させるよりも、より多様な適応行動をとりうることをアシュビーは論じています。また、アシュビーのホメオスタットは第一世代の人工知能の例であり、4つのモジュールからの出力の全ての加重和を使用してモデルを作成しています。これに対して、画像認識等で活躍している最新の第三世代の人工知能で使用されている深層学習法では、入力の全てではなく部分部分を多重にしてモデルを作成して、線形分別だけでなく非線形分別の分野へと適用範囲を広げています。
人間は生存適応のために個人の適応経験を蓄積するだけでなく、集団としての適応経験を文化・伝統・慣習といった形で蓄積しています。文化・伝統・慣習といったものを「封建的」として一面的にとらえるのでなく、新たな視点でとらえなおすことが大切です。現在、大学教育の現場では、データサイエンス系の学部・学科の新設が盛んですが、実技的な面だけでなく、科学思想史の知見を学ぶことが、卒業後も、AIの進歩に伍して創造的勤労体験を持続していくために重要です。追: 杉田研究室の学生諸子が、半世紀以上前に、先生の指導のもと、光に向かって動くウオルターの亀や論理演算機(SUGITAC)の製作やアナログ計算機を使用したホメオスタット計画法の試算に取り組んだ実習室は、昔のままのたたずまい(ただし、建物自体は見違えるほどきれいに改修されています)ですが、名称は情報機器・開発室や物理共同研究室になっています。